行事報告

今年の「東部東櫻同窓会」総会は6月2日(土)午後1時から丸の内の日本工業倶楽部において会員48名の参加を得て、開催されました。
会場の日本工業倶楽部は先月オープンしたばかりの「新丸ビル」に隣接、地下道で繋がっており、交通至便で、会場の雰囲気もよく、参会者には大好評でした。参加者数が例年比やや少なかった点は、反省を要します。この時期には同窓会などが接踵していることもあり、土曜の午後は出にくいとの声も聞かれましたので、今後はウイークデーの夕刻に開催することとしました。
総会での重要議案は、本同窓会の会則改正で、①会長や会計担当の任期を定める、②会員の範囲を京都附属小中学校の在籍者に限定、高校のみの在籍者は外すといった点が、主要な改正点でした。


今回の記念講演は昭和51年京都附属中学卒で、現在慶応大学DMC機構教授の中村伊知哉さんに「日本のポップパワー~デジタル情報社会において、日本は、京都は、個人は、どのような力を発揮できるか」というテーマでの興味深い熱演を一時間余りにわたり拝聴しました。
マンガ、アニメ、携帯小説などを中心とした日本の若者文化や300年の歴史を持ちながらさらに根強く生き抜いている京都西陣の和服屋さん経営の話題にまでわたっての幅広い現代比較文化論が展開され、聴衆を魅了しました。
中村伊知哉さんのお話では、マンガでもアニメなどでも大人文化と子供文化の線引きがないのが、日本のすごく大きな特徴だということです。そのことで、日本のポップカルチャーが競争力を持つという良い面にも出てくるし、「だから日本の大人はだらしがない」と言われたりもしていますが。
マンガを読むにも能力が必要で、それを身につけるのに時間がかかるわけです。マンガは書き手が一杯いてもダメな世界で、大切なのは読み手がどこまで育つかです。ITやネット、デジタルにおいて「作る」のが強い国は結構たくさんあるものの、それを「使う」側のユーザーの層が厚く、レベルが最も高いのは、日本であろうというのが、中村さんの結論でした。
一千年前に、清少納言のような女流文人が仮名文字を発明して文学が大衆に広まったと同様に、現代の女子高生などが多用している携帯の記号文字が文化革新として評価されるかも知れないという中村教授のご託宣には、なるほどと感心しました。
中村さんのご略歴は以下の通り、ホームページはhttp://www.ichiya.orgです。




1961年生まれ、京都市左京区出身。
1976年、京都教育大学附属京都中学校卒、京都大学経済学部卒。大阪大学博士課程単位取得退学。
ロックバンド 少年ナイフのディレクターを辞し、1984年、郵政省入省。
電気通信局で通信自由化に従事した後、放送行政局でCATVや衛星ビジネスを担当。
登別郵便局長を経て、通信政策局でマルチメディア政策、インターネット政策を推進。
1993年からパリに駐在し、1995年に帰国後は官房総務課で規制緩和、省庁再編に従事。
1998年9月、MITメディアラボ客員教授。
2002年9月、スタンフォード日本センター研究所長。
2006年9月から慶応義塾大学DMC機構教授。
(財)国際IT財団専務理事、NPO「CANVAS」副理事長、 (株)CSK顧問、(社)音楽制作者連盟顧問、ビジネスモデル学会理事、芸術科学会評議員。
総務省参与。情報通信審議会専門委員。文化審議会著作権分科会専門委員。
著書に『インターネット,自由を我等に』(アスキー出版局)、『デジタルのおもちゃ箱』(NTT出版)、『日本のポップパワー』(日本経済新聞社、編著)など多数。

(2007年6月19日、東部東櫻同総会会長 岡部陽二 記)